支部からのお知らせ

  • 投稿:2009年4月7日
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【連載】JIAデザイントーク2008

JIAデザイントーク2008


●2008年度 第4回デザイントーク
開催日:2009年1月26日(月)
コメンテーター:芦澤竜一、竹山 聖、本多友常、吉村篤一
司会:青砥聖逸
発表者:魚谷繁礼、福田哲也
会場:大阪市中央公会堂地下大会議室



■魚谷繁礼氏(魚谷繁礼建築研究所)
発表作品/京都型住宅モデル(京都市)
京都型住宅モデルは、「京都まちなかこだわり住宅設計コンペ」(京都市景観まちづくりセンター・都市居住推進研究会共催)の一等案が建築されたものである。現代という時代の京都という都市における一般的な住宅のモデルを構築することを主題に、汎用性あるシステムの提案をこころがけた。



街区-敷地-建物(空地)
京都の街路街区は格子状であり、街区寸法は他都市に比べ大きく、鰻の寝床状の敷地が多い。本住宅は、敷地において建物を街路に面して配置し、奥に庭をとる。このような敷地配置の建築が複数集合することで、街路(オモテ)には壁面線の揃った街並みが形成され、街区中央(ウラ)には庭(空地)が連担し、住宅は採光・通風・プライバシー・物干し場などを獲得する。
木造SI
敷地形状に応えて3枚の壁・床・建具により構成された空間には、三段階のフレキシビリティが与えられ、ライフスタイルの多様化とその変化の早さとに対応する。
①新築時、自由な位置に床を架けることが可能。
②建具の規格化により建具の開閉・取外し・相互取替えが容易であり、日常・非日常や四季などに応じた空間利用が可能。
③家族の増員に対応した増床、減員に応じた減築、敷地の分筆売却が容易に可能。
中央の壁は、集成材パネルを連続して建放し、構造・外装・内装・断熱・調湿・防火の機能を担わしている。減築に際しては、建放し壁の内装をそのまま外装とする。
地産地消
現場と山林との近さを活かして設計者施工者製材所協働で木材流通システムを合理化し、中央の壁(集成材)を除くほぼ全ての構造材及び仕上材に京都産材を用いた。また、職人との協働により、京焼・漆などの伝統的産業技術を取り入れている。
公(オモテ)-私(建物)-共(ウラ)
これまで京都では、街並みのみならずコミュニティの舞台としてもオモテがとかく偏重されてきた。しかし、街路が車両に支配されている現況においては、ウラの有為性こそが再発見されるべきである。将来的に、ウラで隣り合う庭の垣根が取り払われ連担する空地が共用化されると、ウラは街区単位のコミュニティの舞台となりうる。公の道路から切り離された特定多数者のこの共用地は、交通事故や犯罪に対し安全である。この共用地が少子高齢化社会における相互扶助の場となることを期待する。
魚谷氏1
1F内観(提供:「新建築」写真部)
魚谷氏2
2F内観(提供:「新建築」写真部)
魚谷氏3
1F平面図
■福田哲也氏(福田哲也建築設計事務所)
発表作品/海南の家(和歌山県海南市)/ob.(和歌山県海南市)
○海南の家
家族4人(40代夫婦+子供2人;成人)が暮らす住宅の建替え計画。
計画地は約20年前に開発された50戸程の住宅地で、隣と向いに暮らされる親戚も含め密な近隣関係が育まれてきた。施主からは、各自の個室の確保と同時に、いつでも人が集えるように、また法事などの多人数にも対応できる畳の居間を希望された。そうした要望も踏まえ、個々が自立した家族関係と密な近隣関係といった共同体的コンテクストに対応する住宅の仕組みとしての居間の在り方を模索した。
限られた建築面積、階数制限の中で合理的に所要スペースを納める必要からオーソドックスな層構成(地階;駐車スペース、1階;共有スペース、2階;各自の個室)を採る一方で、地階ピロティーの上にもう一層”インナーピロティー”を積み重ねることを試みた。そうすることで、家の内側だけで存在する居間が、もう少し外側に対しても開かれた、広場的な場に置き換わることを意図した。
具体的には、1階は南面を全面開口、東西面にハイサイドスリットを設けることにより、室としての輪郭のぼやけた”閉じない外部的広間”としている。同時 に、地面から持ち上げられてはいるものの、緩やかなレベル変化とすることで外部との連続的な繋がりを保っている。また、この住宅には明確な玄関は設定していない。これまでの玄関を介さずとも成り立つような近隣との関係を保持しつつ、それを積極的に展開させたいと考えたからであり、内外のダイレクトな関わりを強めたいと意図したからでもある。
居間を、固定化された室としてではなく、外部との関わりの中で多様な使われ方をする広間の一様相として捉えた方が、ここでのコンテクストにはしっくり馴染むのではないかと考えた。
福田氏1
「海南の家」外観
福田氏2
「海南の家」内観
福田氏3
「海南の家」平面図
○ob.
日用雑貨を扱う企業の物流センターである。
分散した物流機能を集約し、作業環境の改善と生産性の向上を目的とした計画である。
計画地は、周囲を豊かな山並みが取り囲む一方で、住宅群とともに高圧線鉄塔や物流施設等、様相やスケールの異なるものがスプロール的に混在する雑然とした環境であった。ここでは、物流施設としての要求(=安価で自由度の高い大きな箱)、ロケーションとの折り合いに対応する仕組みを見出すことが主題となった。半ば必然的に工事費の過半を占める構造体へすべてが還元されることとなったが、具体的には、敷地と所要ボリュームとの関係から28m×28mの2層の箱を設定し、以下の3つの構造的アプローチを試みている。
■突出杭によるRC基礎の省略
1階がプラットホーム形式であることから杭(PHC杭500φ、一部SC杭)を地上からわずかに突出させ、その上に直接鉄骨造の建物を載せることを試みている。これにより一般的なRC基礎が省略され、自重の軽量化と工期短縮を図っている。
■橋梁トラス
2階倉庫の中央に橋梁のようなトラスを架け渡すことで、1階作業場の無柱化を実現している。同時に、この橋梁トラスの外部突出部分に事務室・休憩室などをコンパクトに納めることで、28m×28mは空っぽの箱として最大限のフレキシビリティが確保されている。
■反復連鎖する外周構造
箱の外周部には立体トラスをなす線材が反復連鎖し、取り囲むことでひとつの全体系を形成している。平面的には1階無柱空間を成立させるべく水平面剛性を補完し、立面的には2層分の成を持つ梁として機能している。これにより杭支持スパンを大きくとばすことが可能となり、耐力を無駄なく消化できる合理的な杭配置とすることで、杭本数を24本で成立させている。また、この繊細な線材により本体のヴォリューム感は抑えられ、雑然とした風景の中に抽象性と規則性を伴った建築として添えられることで場所本来の魅力を顕在化できないかと考えた。
福田氏4
「ob.」外観
福田氏5
「ob.」内観
福田氏6
「ob.」平面図

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